株式投資型クラウドファンディングが見せる投資の新世界とは?

2018.12.03

本シリーズは、企業の実態・今後の可能性・経営者の人柄・想い・疑問などインタビューを通して企業の本質を探るプロジェクトです。ホームページや決算などでは見えてこない企業の「深層部」を探っていきます。

今回は、FinTech(*1)サービスを提供する株式会社日本クラウドキャピタルを取材しました。2017年に日本では初となる株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「FUNDINNO(ファンディーノ)」のサービスを開始。現在、同業他社の参入で市場が活発になりゆく状況の中でも、累計成約件数40件、累計成約額15億円以上、上限応募額到達までの最短時間3分6秒で5,000万円の調達成功など、その実績に注目が集まっています。

今までにない資金調達方法を提案した日本クラウドキャピタルの大浦学社長とIR室の馬渕磨理子さんに、日本最大級の仮想通貨メディア「コインオタク」を運営する伊藤健次氏と億トレーダーの投資家である平凡なる学生氏、そしてIRクラウドの石田がインタビューを敢行しました!

*1 FinTech……金融という意味の「Finance」と技術を意味する「Technology」を組み合わせた造語で、IT技術を使用した新しい金融サービスのこと。

FUNDINNOが提案するまったく新しい資金調達方法「株式投資型クラウドファンディング」とは?

石田
本日はよろしくおねがいします!
大浦社長
よろしくおねがいします。
石田
では、まずFUNDINNOについてまったく知らない人も多いと思うので、どんなサービスなのか代表の大浦社長からご紹介いただけますか?
大浦社長
僕らがつくったFUNDINNOというサービスは「株式投資型クラウドファンディング」と呼ばれているサービスで、簡単に言うとネットからエンジェル投資家を集めて、資金が欲しいベンチャー企業に投資して応援してもらうというプラットフォームですね。


日本初の株式投資型クラウドファンディングの仕組みについて丁寧に説明する大浦社長

石田
クラウドファンディングなんですね。
大浦社長
そうです。ベンチャー企業が資金調達するときって、エンジェル投資家とかベンチャーキャピタルを回ってお金を集めるのが一般的なんです。でもそうじゃなくて、Webから投資家を集めにいきましょうというサービスがFUNDINNOですね。
石田
クラウドファンディングって購入型が主流だと思うんですけど、「株式投資型」って耳慣れない言葉ですね。
大浦社長
そうですね、アメリカとかでは以前からある仕組みなんですけど、日本ではFUNDINNOが初めてのサービスになります。
石田
これってどういう仕組みで資金を集めるんですか?
大浦社長
仕組みとしては、まず僕らが会社の審査をします。金融商品取引法で定められた方法があるので、それに即した厳密な審査をしていきます。


出典:日本初株式投資型クラウドファンディングFUNDINNO解説動画

伊藤
どのくらいの確率で通るんですか?
大浦社長
だいたい2%くらいですね。
伊藤
2%!? めちゃくちゃ厳しくないですか?
大浦社長
確かにそうですね(笑)僕らの審査基準が主に2つあって、1つは会社が戦う市場の中で大きく成長していける会社なのか、そしてもう1つが独自の強みや優位性を持っているかというところです。投資家さんもリスク背負ってるので、ちゃんと明確な方針を立てて審査しています。
石田
たしかに、投資家も儲からないとやっていけないですもんね(笑)
大浦社長
それで、審査に通った会社をFUNDINNOに掲載するんですけど、そのときに、僕たちが抱えている投資家さんたちにアナウンスして資金調達をしていくんです。
石田
なるほど。ということは、通常のクラウドファンディングは物品などのリターンがあるんですけど、そのリターンが株なんですね?
大浦社長
そうですね。会社はその分株をリターンとして投資家に渡します。あとは会社が成長するのを見守って、あとは上場かM&Aなどの売却かを待ちます。その後、株価の値上がりによる購入価格との差額で投資家は利益を得るという仕組みです。
石田
投資家は審査しないんですか?
大浦社長
もちろん投資家さんの審査もします。一定の金融資産がある、投資経験がある、余裕資金で投資を行う、反社会勢力ではない、という基準で審査します。
石田
投資経験者で、ある程度のリスクにも対応できる余裕資金がある投資家を集めているということですね。
伊藤
企業側が2%しか審査に通らないということですが、逆に投資をやりたいっていう投資家さんが審査に通る割合ってどれくらいですか?
大浦社長
通る割合でいうと、今だと40%くらいですね。
伊藤
おぉ、40%なんですね!
石田
この株式投資型クラウドファンディングは日本では新しいサービスということですが、ぶっちゃけた話、投資家はどのくらい儲けられるんですか?
大浦社長
僕らのサービスはまだ1年ちょっとなので実績はこれからデータが出てくる予定です。実は海外だとこの仕組みは6~7年前からあって、投資リターンのデータはもう出てるんですよ。アメリカの事例でいうと、利回り計算で年間46%というのがあります。
石田
46%ってけっこうすごくないですか?

大浦社長
ですね(笑)。なので、投機性(※)という面で考えても、優秀な金融商品になるんじゃないかと僕は思っています。

※投機…短期間での差益をねらう売買取引や当たれば利益が大きい取引、英訳はギャンブル

平凡
純粋に今まで累計でどれくらいの資金を集めたのかすごい気になるのですが?
大浦社長
累計でいうと……1年で15億ぐらいですかね。
平凡
おお~1年で15億!
大浦社長
1社あたりの平均が4,000万くらいで資金調達していますね。調達した企業でIPOやM&Aをするところは今後出てくる予定です。M&Aはもうすぐ出てくるんじゃないかと思いますね。
石田
それは今後が楽しみですね。

エンジェル投資家の最大の魅力は企業の成長を近い位置で楽しめること!


エンジェル投資家の魅力について楽しそうに語る大浦社長(写真右)とIR室の馬渕さん(写真左)

石田
ちなみに馬渕さんはFUNDINNOに関わってどのくらい経つんですか?
馬渕
今年の2月くらいからなので……約半年ですね。
石田
馬淵さんが思うFUNDINNOのサービスの魅力を簡単に言うとどんなところですか?
馬渕
うーん、簡単にですか……(笑)やっぱり「自分もエンジェル投資家になれる」ってところが投資家にとっての魅力じゃないですかね。
石田
エンジェル投資家って、資金も経験も一流の投資家がやってるイメージがありますけど、FUNDINNOだと最低どのくらいからやれるんですか?
馬渕
基本は10万円からですね。ものによって1万円からとか……。
石田
1万円!?
大浦社長
基本は10万円からですけど会社によってはかなり投資家を増やしたいというところがあって、そういう会社は1万円から投資できたりします。
石田
僕でもエンジェル投資家なれそうですね(笑)エンジェル投資家になれることの魅力って具体的に何なんですか?
馬渕
気に入ったベンチャー企業の株主になれるとか、株主優待を受けられるとか投資企業のIR情報を確認できるとかさまざまありますが、1番は創業して間もない企業に投資をすることで企業の成長を見守ったり、一緒に楽しんだりすることだと思いますね。
石田
これから大きくなる可能性を秘めた会社に最初から関われるのはなんかロマンを感じますね。ちなみに、ベンチャー投資の現状ってどんな感じなんですか?
大浦社長
市場感としてはずっと成長している市場で、去年が2,700億円程度だったかと思います。投資家さんもベンチャー企業に投資したいというニーズが高くなってきていますね。
石田
投資家もロマンを求めているんですね。
大浦社長
だけど、エンジェル投資家がベンチャー企業に出資しようと思ったら、1社で500万とか1,000万とか出さないといけなかったんですよね。
石田
それはちょっとハードルが高い……。やはりエンジェル投資家は資金が豊富にある人しかなれなかったんですね。
大浦社長
ですね。だけど僕らのサービスだと10万円とか50万円とか投資ができるというところで申し込んでくれる投資家さんがいて、ベンチャーを応援したい、ベンチャー投資をやりたいと思っている人たちが潜在層として多かったんだなと実感していますね。
石田
実感、というと?
大浦社長
FUNDINNOのサービスは、始まってまだ1年ちょっとくらいなんですけど、それでも面白い案件だと3分で5,000万集めるようものがあったりして。
石田
3分で!?それはすごい!!
大浦社長
面白いなと思った会社にはみんな投資していきたいというのが想いとして強いんじゃないかなと。
石田
面白いものを応援したくなる気持ちはわかりますね。エンジェル投資家は企業の成長を近い位置で応援できるっていうのが出てきましたけど、具体的にはどういうことですか?
大浦社長
そうですね、エンジェル投資家さんにとって1番良いと思うのは 企業の社長との距離がすごい近いというところがあって、投資家さんがTwitterで気軽に社長と話していたり、投資家さんと会っていたりとか。
石田
すごい距離感(笑)友達みたいになってますね。
大浦社長
例えば、前にアパレル系の会社の資金調達があったんですけど、投資家さんがお店に行って社長とお話するということもありました。そういう近い関係を作ることって上場会社だと難しくて、どうしても距離が遠くなってしまいがちになるんですよ。
石田
確かに株主と株式会社って、株主が偉いみたいな上下関係があって、仲がいいというよりはよそよそしいしイメージが……。
大浦社長
ですね。うちのプラットフォームだと、投資家さんと企業側はフラットな立場なので、近い距離で見守りつつ成長を楽しむことができます。
石田
この辺については、また後ほど詳しく聞いていきたいと思います。

株式投資やベンチャーキャピタルとの違いから見える、FUNDINNOが考える投資家と企業との関係性


FUNDINNOと投資家との独特な関係性にインタビュー側も興味津々

石田
FUNDINNOの株式投資型クラウドファンディングって普通の株式投資とどういった点が違うんですか?
馬渕
今の株式投資は短期的な利益を追求しがちなんですけど、私たちはベンチャー企業を応援していくという株主本来のあり方を理念としているんですね。成長を楽しむリスクというか、長期的に企業を応援するところが株式投資との違いです。
石田
エンジェル投資家ってやっぱり利益より気に入った会社を応援したいって人が多いんですかね?
大浦社長
1番多いのが、企業の成長を楽しみたいという30~40代のエンジェル投資家さんですね。
石田
結構若いですよね?
大浦社長
はい。投資家の審査でOKだった人を見ると若者の富裕層が多いという結果になったんですよ。若い投資家は自分がある程度成功したから、今度はベンチャーを応援していこうという思いを持って参加されている人が多いです。
石田
自分が応援されて成功してから、「じゃあ今度は自分が応援する側に回ってやる!」ってことですね。かっこいい!
大浦社長
そういう情熱のある投資家が多いですね。でも、完全な応援だと寄付になるので、プラス投機性というところでFUNDINNOに参加してくれているという感じです。
石田
では、ベンチャー企業の資金調達先のひとつであるベンチャーキャピタルとはどういう違いがあるんですか?
大浦社長
ベンチャーキャピタルのお金って、仕組み上は彼ら自身のお金じゃないんですよ。後ろには投資家がいて、彼らのお金をベンチャーキャピタルが預かって投資をしていく形式なんです。
石田
投資家は間接的に投資をしている形になるんですね。
大浦社長
でもFUNDINNOの場合は、僕らが投資するわけじゃないんですよ。投資家さんが直接選んで投資していくところが違うので、完全にフェアになるところですね。
石田
フェアになるとは?
大浦社長
ベンチャーキャピタルの場合は、お金を出してくれる投資家の利益を気にして投資をするので、社長の想いとか人柄とかの企業の内面を見なくなるんですよ。でも、FUNDINNOでは個人で決めて投資するので、企業も投資家もフラットな立場でマッチングできるプラットフォームになっています。
石田
確かに投資家が自分で選ぶのであれば、誰かのことを気にする必要なんてないですもんね。
大浦社長
ただ、ベンチャーキャピタルとは一緒にやることが多いので連携は強めています。というのも、僕らのサービスだと規制で企業は1年間で1億円しか集められないんですよね。
石田
へぇ、そうなんですね。
大浦社長
そうなると企業が成長していった時に今のベンチャー企業は1億円集めるタイミングが多いんですよ。そうなった時に今の僕らでは対応しきれないので、その後の出資をベンチャーキャピタルにしてもらうように連携を取っています。
石田
今までの話を聞く中で、FUNDINNOって投資家と会社の関係性がすごい近くて、さっき言っていたようにフェアってのが普通の投資と違うなと感じたんですけど……。
大浦社長
株主さんとの関係は、投資家だからという感じではなくフェアでいようというと思っているので。だから、僕らも株主総会開く時に「絶対来い!」って言うんですよ(笑)
石田
あはは(笑)
大浦社長
どんなことがあっても予定を開けてくださいって言って、去年も全員来てくれたんですよ、40社くらいかな?
石田
なかなか強引ですね。たしかにフェアな関係じゃないと言えない……。
大浦社長
そして皆さんに「僕らはプラットフォーマーなので、僕らが成長していくためにはどれだけいい会社が出てくるかが重要です。僕らまだリソースが少ないので株主さんに頑張ってもらわないと成長できないんです」とか言ったりして(笑)
石田
あはは、すごい(笑)
大浦社長
そして、株主ごとにKPI(*2)を設定して「じゃああなたは年間2社」みたいに設定してコミットさせていくみたいなことをやってます。
石田
こういうことやって投資家さんから怒られたり反発にあったりしないんですか?
大浦社長
それが、こういう関係をつくっていくと投資家の皆さんはすごく嬉しそうなんですよね。「こんなこと言われる機会ない」とか「いつも腫れ物みたいな感じで扱われるけどここは違う」と好意的に受け止めてくれています。
石田
そうなんですね! なんか意外です。
大浦社長
元々株式会社という仕組みが最初にできたときって、互助団体みたいにみんなで出資して応援して盛り上げていこうという形で始まって、それがだんだん金融商品化して今の形になっていったんです。
石田
はい、そうですね。本来の思想としては、頑張る人と、それを応援する人。その仕組みが株式会社ですよね。
大浦社長
それがこの株式投資型クラウドファンディングだと、そもそもの互助団体に近い形に先祖返りしたような、応援することによって企業が成長するような仕組みになっているので、この関係性を実現しようと思ってます。
伊藤
それ……エンジェル投資家の醍醐味ですね!
大浦社長
これが、今の時代に必要な新しい株式投資の形なんじゃないかと思っています。
伊藤
確かに、素晴らしいサービスですね!

*2 KPI……重要業績評価指標。目標達成までの過程において達成度を測定する指標となる。

株式投資型クラウドファンディングは投資家の醍醐味を楽しめる!

終始柔和な表情でインタビュアーの質問に答えてくれる大浦社長。1年前に日本に登場したばかりでまだ知らない人も多い株式投資型クラウドファンディングの仕組みや魅力、メリットについて語ってくれました。

「好きな会社を近い場所で応援をする」「会社と投資家はフラットな関係性である」という今までの株式投資にはなかった、というよりも失われてしまった本来の投資の姿を改めて今の時代に提案していく大浦社長。しかし、この姿こそが投資家としての醍醐味でもあります。次回は仮想通貨をよく知る伊藤氏・平凡氏を中心にICOとの市場の違いや税制面の違いなどを掘り下げていきます!

(取材:石田(@hirokiishida1)、コインオタク 伊藤(@it0ken)、平凡なる学生(@heibongakusei)/文:雨輝・イワハシ/撮影:0149)

大浦 学
日本クラウドキャピタル代表取締役COO。明治大学大学院グローバルビジネス研究科でマーケティングを研究し、同研究科で代表取締役CEO柴原と出会う。

ベンチャー企業の育成に貢献するお互いの理念が一致し、2012年5月にデジタルコンテンツの企画、立案、製作、開発を行うシステム会社を創業し、2年目には黒字化を達成。

地域活性化アプリの開発から自治体との関係性が深まり、箱根町の支援を受け2014年1月に一般社団法人はこねのもりコンソーシアムジャパンの理事として創業し、 同法人の会員管理システム及び、UI/UXの設計を含めての包括的なWEBシステムの開発を行う。

イベントの集客から WEBマーケティング、SNSマーケティング、CRM(顧客関係管理)などユーザーの満足度、ロイヤリティを高める実践マーケティングに従事。

馬渕 磨理子
日本クラウドキャピタルメディア戦略室アナリスト兼任マーケティング、FUNDINNO証券外務員。日本テクニカルアナリスト。法人の資産運用・管理を行う経験を持ち、全国各地で金融セミナーの講演活動を行っている。その他、マーケットアングルにゲスト出演、Yahooファイナンスの記事掲載、ラジオ日経など多数の出演・執筆経験がある。
コインオタク 伊藤
日本最大級の暗号通貨サイト「COIN OTAKU」CEO。1984年生まれ。静岡県出身。一般社団法人Fintech協会会員、国内企業仮暗号貨事業顧問、暗号通貨取引所アドバイザー、暗号通貨投資アナリスト。
メディア出演:テレビ東京WBS、テレビ東京モーニングサテライト、NHKおはよう日本、各種雑誌ラジオ取材
平凡なる学生
株・FX・仮想通貨の専業トレーダー。株歴9年目の23歳。株・FX・仮想通貨トレード。株で5万円を10年で1000万円まで増やすもすべて失い、借金を背負ってどん底を味わう。しかし2017年8月に5万円で再起を図り、2018年2月、3400倍の1.7億円達成。同年4月に法人を立ち上げる。
石田
1992年生まれ、埼玉県狭山市出身。学生時代、陸上で全国大会ベスト16、野球で関東大会2年連続優勝。引退後、20歳で中古車販売、中古品リユース業で独立と同時に株式投資を始める。現在は美容業界にも参入し、まつ毛エクステサロン、ホワイトニングサロンを経営しながら株式会社LLLのCOOを務めている。

投資にストーリーを。

私たちは「投資にストーリーを」をモットーに、社会に貢献している価値ある企業を「IR」という切り口から、中長期的な株式投資につなげて応援していく活動を行っています。優良な企業に株式として資本が集まり、国民一人ひとりが元気になれる社会づくりをしていきたい。そんな私たちの思いに少しでも賛同いただけたらコメントやシェアをお願いいたします。(IRクラウドとは?

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