3分6秒で5000万円が動く、株式投資型クラウドファンディングの世界【ICO×IPO激論編】

2018.12.26

本シリーズは、企業の実態・今後の可能性・経営者の人柄・想い・疑問などインタビューを通して企業の本質を探るプロジェクトです。ホームページや決算などでは見えてこない企業の「深層部」を探っていきます。

今回は、2017年に日本初となる株式投資型クラウドファンディングのプラットフォーム「FUNDINNO」のサービスを開始した日本クラウドキャピタルにインタビュー取材を敢行。

第1回は日本ではまだ歴史の浅い株式投資型クラウドファンディングの仕組みや魅力について大浦社長に語っていただきました。

>> 第一回はこちら:株式投資型クラウドファンディングが見せる投資の新世界

第2回となる今回は、FUNDINNOのサービスが登場した同時期に盛り上がりを見せていた仮想通貨ICOと株式投資型クラウドファンディングとの市場の状況や税制面などさまざまな違いについて伺いました。

当社の石田がインタビューしつつ、仮想通貨の世界をよく知るコインオタクのCEO・伊藤健次氏と億トレ投資家・平凡なる学生氏がどんどん切り込んでいきます!”

似ているようでまったく違う、株式投資型クラウドファンディングと仮想通貨ICO


仮想通貨の知識が深い平凡(写真左)と伊藤(写真左から2番目)がICOの現状を話しつつ大浦社長(写真右)へ質問を投げかける

石田
FUNDINNOがリリースされたのって去年ですよね?
大浦社長
そうですね。2017年の4月にリリースをしました。
石田
ちょうどその時ってICOが盛り上がってた時期だと思うんですよね。仕組み的にはFUNDINNOと似ているなと感じたんですけど……。
大浦社長
資金調達の仕組みは似ていますね。ただシステム的にはちょっと違います。FUNDINNOがやっている株式投資型クラウドファンディングは非公開株式をリターンとして不特定多数の投資家から資金調達を行う仕組みですが、ICOの場合は自社トークンを発行して、トークンに投資してもらう形で資金調達を行います。
石田
まあ、現金と仮想通貨だと大本から違いますしね。伊藤さんはコインオタクとかでICOと関わっていると思うんですけどいかがですか?
伊藤
そうですね~、似ている市場なのに180度違う感じがしますね(笑)
平凡
180度ってそんな違いますか?
伊藤
まず参加のハードルから違います。FUNDINNOさんは厳格な審査をされているじゃないですか?
大浦社長
そうですね。審査に通るのが企業だと2%くらいで、投資家は40%くらいになります。
伊藤
仮想通貨だとその審査とかに漏れた企業と投資家がマッチングしている市場がICOって感じですね。
石田
へぇ~、そういう感じなんですね。
伊藤
企業側と投資家側、両サイドとも審査があるというところで一定のふるい分けが行われるじゃないですか。
大浦社長
はい、そうですね。
伊藤
でも仮想通貨の市場ってルールがないんです。規制はありますが、それは努力義務みたいなもので、結果的に全て受け入れざるを得ない状況なんですよね。そうすると、玉石混交の石がめちゃくちゃ多い状態になってるんです。
石田
すごい状態ですよね。たしか平凡さんって5万円から投資をスタートして、それが去年1億円を突破したんですよね?
平凡
はい、そうですね。去年1億円になりました。
石田
そのときって仮想通貨の市場ってどんな感じだったんですか?
平凡
当時は仮想通貨自体が盛り上がっている最中で、まさに成長段階でしたね。株とか為替からも仮想通貨の方に資金が流れていって、その過程で僕も仮想通貨のFXで入った感じです。
石田
規制やルールはどうだったんですか?
平凡
やっぱり伊藤さんがおっしゃられたようにある程度の規制はあるけど、ルールがないという感じで、そこで上手く利益を生み出す方が多かったと思います。僕もそこに乗っかったというか(笑)
伊藤
失礼ながら、平凡さんの投資の始め方ですと、本来であればこのような規模の投資に参加するための審査に通らない属性だと思うんですよね。
石田
学生で、かつ余裕資金が5万円ですもんね……。
伊藤
明らかに、通らない……。
平凡
ですよね……(苦笑)
大浦社長
そうですね(笑)ただ、僕らが扱う非上場株式はハイリスクハイリターンの商品なので、どうしても上場株よりも厳しくさせられているところはあります。本来、上場株って投資経験までは求めないんですけど、 僕らは投資経験を要件としてちゃんと見るようにしていますね。
石田
ちなみに今だったら平凡さんも通りそうですか?
大浦社長
たぶん通ると思いますよ。
石田
ICOが1番盛り上がってた去年の感じと今のFUNDINNOを比べると、似たような部分はあるんですかね?
伊藤
1番は新しい投資分野が確立して、そこに投資家も注目していて、盛り上がりを見せている点ですよね。案件の性質は真逆なのに。
石田
というと?
伊藤
さっきも言った180度違うというのはまさにそこで、ICOに出ている案件は、性質的にFUNDINNOの審査に通らないですよね?
大浦社長
通りにくいと思います。
伊藤
ICOで資金調達している人たちは少し変わっていて、資金を集めて何をつくるのかっていうと、彼らは腕時計とかつくったりしちゃうんですよね。
石田
腕時計!
平凡
たしかに、去年から僕も何社かICOに参加したんですけど、プロジェクト自体が不透明だったり、本当に実現できるのかというプロジェクトがたくさんあって、結構詐欺的な案件も散見されましたね。
伊藤
そうなんです。日本国の法律に則ってやりましょうっていうのは、たぶんFUNDINNOさん向きの案件になっていきます。ICOの仮想通貨サイドは、法やルールが整備されていない案件が多く、それを引き続きやり続けると思います。
石田
そうなんですね。
平凡
それと差別化してベンチャーに投資するサービスを立ち上げられたところはICOとの最も大きな違いですよね。

ICOとIPO、どっちの上場を目指すべき?


インタビューというよりディスカッションのようにICOとIPOについての意見が交わされる

石田
疑問なんですけど、ICOで資金調達した企業が成功も失敗も含めて実際に動き出した事業ってどのくらいあるのかなって思うんです。ICOで資金調達した事業が動き出してるイメージがあんまりないんですよね。
伊藤
なるほど。ICOした事業の中には、きちんと行った内容を報告しているところもあるんですけど、実はだいたいの事業が途中でストップして音沙汰なくなっちゃったりします(笑)
石田
えええ!? 音沙汰なくなっちゃうんですか!?
伊藤
はい(笑)コインテレグラフ(*2)が今トレースできているものでレポート出したんですけど、トークンが上場するところまでいった事業は約8%でした。
石田
8%……。
伊藤
ただ、トレースできている事業ってしっかりとマーケティングしてるような真剣にやってる方々なんですよね。だから資金調達して何もしないよっていう事業はトレースできていないんで、そもそも分母にも入らないんです。
石田
ということは実際はもっと数字が悪いということなんですね……恐ろしい。FUNDINNOさんの扱う案件では、事業は動いているんですか?
大浦社長
事業は動いていますね。僕らでいう上場はICOじゃなくてIPOなんですけど、今でいうとまだ0社です。IPOするには3年くらい時間がかかるので。
石田
まあそうですよね、これからですね。
伊藤
そうなると3年も待ってられないので、ICOをしたいっていう企業がいっぱい出てきそうですよね。
石田
ああ! たしかに!
伊藤
結構いるんですよ。IPO をやろうと思ったんだけど ICO に切り替えましたって企業。
大浦社長
うちもよく来ますよ。資金調達する側からすると クラウドファンディングと ICO 一緒に考えて、どっちで調達しようかな?ということで両方動いている会社とかあります。
石田
そういうやり方もあるんですね。
大浦社長
あと、僕らだと集められる金額に1億円の上限があるので、1億じゃ足りないんだよねという感じで ICO に変えちゃう企業もいます。
石田
お金の問題は仕方ない部分もありますよね。
大浦社長
あとは、最近だとICOすると上場できなくなるのでIPOで資金調達しようという動きもありますね。
石田
逆にICOで資金調達した方がいい事業って何なんですかね?
大浦社長
そうですね、グローバル企業を日本から輩出しようと思ったら僕はICOだと思います。グローバルな投資家が入ってきて、金額の制限がない土俵でやらないとアメリカの調達額と比べると日本の調達額は少なすぎるんですよね。
石田
市場としては海外が成長していますからね。
大浦社長
世界同時多発的に同じようなビジネスモデルが出てきている時に、かたやアメリカで10億円集めてスタートするのと、日本で5,000万円集めてスタートするのだったら、絶対負けちゃうんですよ。
石田
そりゃそうですよね。
大浦社長
負けないようにするためにはICOみたいな仕組みでドカッと集めて一気にグローバルに展開していかないと、日本からグローバル企業は出なくなると思いますね。

エンジェル投資家になる上で知っておきたい、最大1,000万の控除ができる「エンジェル税制」とは?


エンジェル税制について解説する大浦社長。インタビュアーはこの税優遇については知らなかった

石田
少し話戻るんですけど、仮想通貨って税金すごいですよね? 特に平凡さんとか5万円から1億とかそんなに稼いだら結構税金やばいんじゃないですか?
平凡
そうですね。仮想通貨は雑所得扱いになってしまうので最大で住民税と所得税合わせて55%くらい取られるっていう……。
石田
うわぁ……。仮に利益が出ても半分以上もっていかれちゃうんですね。
平凡
株の場合は譲渡所得になると思うので、申告分離課税で20%ぐらいですよね。そういう意味でもたしかに株は魅力があるかなと思います 。
石田
平凡さん、だいぶ国に貢献をしましたね。
平凡
そうですね(笑)
石田
FUNDINNOさんでは税制面の優遇とかあるんですか?
大浦社長
はい。ベンチャー企業に投資した場合独特の「エンジェル税制」っていう国が作った制度が適用できる場合があります。
石田
ちょっとすいません、僕知らないですね。
大浦社長
これは、例えば設立3年未満の若い会社に対して投資をした時にその投資分がほぼまるまる減った形の課税になるみたいな優遇措置ですね。
石田
……いまいちピンと来ないですね。
大浦社長
例えば2,000万年収がある人で1,000万ベンチャー企業に投資した場合は1,000万の年収として申告するみたいな感じです。ほんとはエンジェル税制にもAとBと種類があって説明すると複雑で長くなるのでざっくりとした説明なんですけど。
石田
なるほど、節税できるわけですね?
大浦社長
ですね。先ほどの例は設立3年未満の会社への投資が対象になるAの優遇措置なんですけど、この場合だと総所得金額の40%と1,000万円のいずれか低い方の金額分が総所得金額から控除されます。(https://fundinno.com/questions/50 より)
平凡
すごいですね!
石田
馬渕さんはこういう税優遇を受けられる投資ってどうですか?
馬渕
メリットだと思いますね。投資されてる方の税金はどんどんかさんでくるので、こういう優遇が受けられるならぜひ活用してもらいたいと思います。FUNDINNOの投資家の方も、エンジェル税制が適用できる企業かどうかを投資の判断基準のひとつにできますね。
石田
ということはFUNDINNOの中にもエンジェル税制が適用できる企業とできない企業があるということですか?
大浦社長
そうです。エンジェル税制は結構複雑で、できる企業とできない企業の差が結構あるんですよね。
石田
FUNDINNOではわかりやすく表記されているんですか?
大浦社長
そうですね。適用できる企業は募集画面で確認できるようになっています。
石田
このエンジェル税制って、平凡さん、伊藤さんはどう思いますか?
平凡
仮想通貨をやっている側からすると、恵まれていて羨ましいですね(笑)
伊藤
めちゃくちゃいいなって思います!
平凡
すごいタイムリーな話で、今ベンチャー企業に出資を考えてるんですけども、エンジェル税制っていうのを今初めて知って……適用条件は設立3年未満だけですか?
大浦社長
いえ。設立3年未満であること以外にいくつか要件があります。中でも1番大きな要件が、代表が株を100%所持していないことです。株の5/6以下を外部に割ってる必要がありますので、要は代表の持ち株が83%以下であればだいたい適用されていると思いますね。
平凡
なるほど、参考になります!
伊藤
この制度、ベンチャー企業の人知らなそうですよね。
大浦社長
知らないと思います。企業も知らないし、投資家も知らないからあまり使われていないマイナー制度なんですけどね。
石田
もったいない……。
大浦社長
だからこういう株式投資型クラウドファンディングみたいな仕組みがあって、経産省もそれでようやくエンジェル税制のアピールを頑張ろうってなっているところです。やはりFUNDINNOでもエンジェル税制が適用できる案件は人気になりますね。
石田
エンジェル税制の適用申請はいつまでにやらないといけないんですか?
大浦社長
だいたい年内にやらないといけないという感じですね。だからその確定申告の時に全部やるという仕組みになってます。
平凡
出資したその年ということですか?
大浦社長
その年です。その年じゃないと適用できないです。
平凡
ああ、じゃあ僕は申請忘れてましたね……。
大浦社長
あららら(笑)

投資家も企業も適切な市場を選ぶ見極めが必要である

FUNDINNOで資金調達する企業のIPOに関する現状も絡めながら株式投資型クラウドファンディングの企業が目指すIPOとICOとの違いについて掘り下げていきました。

ここ近年勢いを見せている仮想通貨の市場ですが、いまだ国の整備が追いついていないという現状があり、似ているシステムでも市場の性質や税制面などみるとまったく様相が異なることが理解できます。企業側は自分たちの事業がIPO、ICOどちらを目指すべきか状況を分析して選ぶ必要があり、投資家はどちらにも存在するメリットとリスクを理解して投資するかを見極める必要があるのではないでしょうか。

次回はインタビュー最終回!FUNDINNOに集まる企業や今後の成長のカギを握る「投資コミュニティ」、そして大浦社長がFUNDINNOを立ち上げるに至った原点について迫ります!

*1 テックビューロ……仮想通貨交換業を営む日本の企業。仮想通貨取引所「Zaif」を運営。
*2 コインテレグラフ……仮想通貨・ブロックチェーンメディア

(取材:石田(@hirokiishida1)、コインオタク 伊藤(@it0ken)、平凡なる学生(@heibongakusei)/文:雨輝・イワハシ/撮影:0149)

大浦 学
日本クラウドキャピタル代表取締役COO。明治大学大学院グローバルビジネス研究科でマーケティングを研究し、同研究科で代表取締役CEO柴原と出会う。

ベンチャー企業の育成に貢献するお互いの理念が一致し、2012年5月にデジタルコンテンツの企画、立案、製作、開発を行うシステム会社を創業し、2年目には黒字化を達成。

地域活性化アプリの開発から自治体との関係性が深まり、箱根町の支援を受け2014年1月に一般社団法人はこねのもりコンソーシアムジャパンの理事として創業し、 同法人の会員管理システム及び、UI/UXの設計を含めての包括的なWEBシステムの開発を行う。

イベントの集客から WEBマーケティング、SNSマーケティング、CRM(顧客関係管理)などユーザーの満足度、ロイヤリティを高める実践マーケティングに従事。

馬渕 磨理子
日本クラウドキャピタルメディア戦略室アナリスト兼任マーケティング、FUNDINNO証券外務員。日本テクニカルアナリスト。法人の資産運用・管理を行う経験を持ち、全国各地で金融セミナーの講演活動を行っている。その他、マーケットアングルにゲスト出演、Yahooファイナンスの記事掲載、ラジオ日経など多数の出演・執筆経験がある。
コインオタク 伊藤
日本最大級の暗号通貨サイト「COIN OTAKU」CEO。1984年生まれ。静岡県出身。一般社団法人Fintech協会会員、国内企業仮暗号貨事業顧問、暗号通貨取引所アドバイザー、暗号通貨投資アナリスト。
メディア出演:テレビ東京WBS、テレビ東京モーニングサテライト、NHKおはよう日本、各種雑誌ラジオ取材
平凡なる学生
株・FX・仮想通貨の専業トレーダー。株歴9年目の23歳。株・FX・仮想通貨トレード。株で5万円を10年で1000万円まで増やすもすべて失い、借金を背負ってどん底を味わう。しかし2017年8月に5万円で再起を図り、2018年2月、3400倍の1.7億円達成。同年4月に法人を立ち上げる。
石田
1992年生まれ、埼玉県狭山市出身。学生時代、陸上で全国大会ベスト16、野球で関東大会2年連続優勝。引退後、20歳で中古車販売、中古品リユース業で独立と同時に株式投資を始める。現在は美容業界にも参入し、まつ毛エクステサロン、ホワイトニングサロンを経営しながら株式会社LLLのCOOを務めている。

投資にストーリーを。

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